タイラバノート　マダイの視野、色や動く物への反応

タイラバをしてるとよく話題に上るのが釣れた時のネクタイカラーやタナや動かし方。そもそもマダイが反応するのはどういう時なのか。マダイの生態について色々調べてみました。マダイって養殖や漁のために色々研究されてるんですね。研究論文は難解だけどじつにおもしろい。

マダイの視野ってどうなってるの？
マダイはどんな色が好きなの？
マダイはどの速さの物に反応するの？
まとめ（３つの論文から分かったこと）

マダイの視野ってどうなってるの？

塩原泰・有元貴文「マダイの視軸に関する行動実験」日本水産学会誌65巻4号728p(1999)

解剖などの結果、マダイの視軸は前下方に20°向いているということが分かっています。底にいるエビ、カニを捕食するために底の方を見やすいようにしているということですね。

この論文では半球体の１点にえさをおき、ゲートを開けてえさに一直線に向かってくるかを実験しています。様々な角度の所に置いてどの場所なら一直線にえさに来ることが多かったか観察したところ、その結果は下の図の通りでした。10とかの数字は10回やって10回えさに直行したことを意味します。５なら10回中5回。

やはり下の方がよく見えているのが分かります。

底から２、３ｍにいるマダイがフォール中の仕掛けを追いかけてきていて、着底後巻き始めの時に食うとよく言われます。これは、マダイが下の方がよく見えているからなんですね。もちろん上も見えてるので、巻き上げについてきて食い上げることもありますが、底ベタのマダイを狙うというのはマダイの視野から考えても理に適ってるんですね。

マダイはどんな色が好きなの？

伊奈和夫・領木快一・東久美「マダイの色に対する反応性」日本水産学会誌45巻１号１p(1978)

マダイが好む色は答えが出てます。しかも約50年前！
実験と結果を自分なりにまとめると、次のとおり。

過去の実験でスルメイカ内臓とコマセアミの脂溶性成分にマダイが強い摂餌刺激活性を示した。
（摂餌刺激活性：試料に誘引され、続いて明らかなついばみ行動が見られること。これに対し、誘引活性（誘引性）：魚は試料に誘引され、えさに触れるが、明確な摂餌行動は見られないこと。上記論文より）

その色素を抽出したら赤色色素だったので、合成食用色素を使って様々な色に着色したデンプンを使って実験。黄色、オレンジ色、赤色の色素には強い誘引性が認められ、ビタミンB2（蛍光黄色）にも誘引性が認められた。緑色、青色、紫色の色素は誘引性が全くなく、青色の色素は逆に忌避行動が観察された。

その論文には吸収スペクトルの話が出てきます。たとえば「マダイは430㎚～500㎚に極大吸収をもつ色素に誘引され、500㎚以上ではその活性は低下し、600㎚以上では全くなくなる」と書かれています。
「極大吸収をもつ色素」というのはその波長の色素を吸収するもので、目に見えるのは吸収される色素と補色の関係にある色素ということになります。430㎚～500㎚の波長の色素って青なんですけど、この色素を吸収するので、青色の補色になるオレンジ色に見えている物体によく反応しているということです。

タイラバネクタイの定番カラーはオレンジ系です。マダイが反応しやすい色がよく選ばれているからなんですね。蛍光黄色は少し意外やけど、黄色系として考えれば納得できるか…。

ハヤブサのネクタイ。いろんなオレンジが全部入ってる！

マダイはどの速さの物に反応するの？

丘明城、石崎宗周、金碩鍾、不破茂ほか「動きのある物標による視覚刺激がマダイの摂餌行動に与える誘発効果」日本水産学会誌79巻2号158p(2012)

どれくらいのスピードで動く物にマダイが反応するかを水槽実験しています。
黄色に着色した直径2.7cmの鉛玉（ひょっとしてタイラバヘッド？）を10cm上下させ（往復20cm）、速さを2秒周期～16秒周期で2秒ごとに変えて反応の違いをみる実験をしています。

結果は、「おもりが上下運動する方が、静止状態よりもマダイの摂餌行動を誘発する効果が高くなる上下運動周期は８秒の場合であると判断された」とのこと。要は、8秒で20cm、2.5cm/秒で周期的に往復運動している時に摂餌行動を誘発するということ。

デッドスローで食うのはこういう理由なんですかね…。
でも、タイラバ巻く時って1秒1回転でリール巻いたら1秒で約50cm巻けるから、2.5cm/秒よりもっと早く巻いてる気がします。
ネクタイのヒラヒラが2.5cm/秒で往復運動していればいいと解釈すればいいのでしょうか。ネクタイを2.5cm/秒の往復運動になるように巻くって、難しそうです。そもそも実験ではネクタイじゃなくて鉛玉使ってますし…。